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【巻頭レポート】 電解ソーダ工業における省エネルギー技術への取り組みについて 日本ソーダ工業会 参与理事
坂本明雄 |
わが国の電解ソーダ工業のエネルギー効率が世界で最も高いということについては、化学産業団体・地球温暖化対策協議会や日本経済団体連合会の温暖化対策資料の中に、エネルギー効率の国際比較として、電解ソーダ工業でのカセイソーダ製造の電力原単位が例示されていることから、既に皆様ご承知のことと思います。この原単位比較の例示で、わが国が最も良いのは、わが国ではイオン交換膜法電解槽が100%導入されているからです。イオン交換膜法電解槽が100%導入されている国は、わが国の他には、韓国、台湾などがありますが、欧米等では、未だにエネルギー効率の劣る隔膜法や水銀法の設備があるために、わが国より原単位が劣っているのが現状です。 電解ソーダ工業は、食塩水を電気分解して、カセイソーダ、塩素、水素を製造する工業で、その製造方法には、イオン交換膜法、隔膜法、水銀法があります。イオン交換膜法製造設備の中核となるイオン交換膜法電解槽は、わが国で精力的に研究開発が進められた、世界で最もエネルギー効率の良い設備です。 電解ソーダ工業の製造工程は、塩水の精製、電気分解、カセイソーダの濃縮及び塩素ガス・水素ガスの精製などの3工程から成ります。電気分解を行う中核となるイオン交換膜法電解槽は、大きく分けて、イオン交換膜、陰極及び陰極室、陽極及び陽極室、直流電源系統から構成されています。さらに、電解槽設備を最適運転させるためのシステムそのものも一つの要素です。消費エネルギーのほとんどを占める電気分解での消費電力を削減するため、つまり電力原単位向上のため、これら製造工程に関わる設備や電解槽を構成する一つ一つについて、現在でも技術開発が行われており、各社とも、日々、省エネルギーに向けて努力をしているところです。 日本ソーダ工業会では、ソーダ工業での生産技術及びソーダ製品、環境保全に関わる技術開発において、ソーダ工業に顕著な貢献の業績に対して、毎年「技術賞」を贈っております。この5年間の受賞技術は、次の通りです。 平成20年度「白金合金系活性陰極の開発」(東ソー株式会社) 平成19年度「ゼロギャップ法食塩電解技術の確立」(株式会社トクヤマ) 平成18年度「塩酸酸化プロセスの開発と工業化」(住友化学株式会社) 平成17年度「揮発性有機塩化物の無害化技術及び装置開発」(株式会社ADEKA) 平成16年度「イオン交換膜法食塩電解槽の開発」(東ソー株式会社) 以上5件のうち、実に3件が、電解槽の省エネルギー技術となります。 このうち、昨年度の「ゼロギャップ法食塩電解技術の確立」は、イオン交換膜と電極(陰極・陽極)との距離(電極間距離)をより狭めることを可能にし、電解電圧、すなわち消費電力の大幅な削減を図る技術です。ちなみに、ゼロギャップとは、電極間距離がゼロに近いという意味です。 また、本年度の「白金合金系活性陰極の開発」は、低電圧で水素を発生させることができる電解用陰極の開発で、これまで白金系合金は、触媒活性に優れている反面、耐久性に課題があった点を克服したもので、これも安定的に電解電圧、すなわち消費電力の削減につながる技術です。 わが国のソーダ工業は、イオン交換膜を始めとする電解槽及び他の製造工程に関わるさまざまな既存の電解ソーダ工業技術の開発を推し進め、より一層の省エネルギー技術の開発に引き続き取り組んでまいります。 |
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【トピックス】 「第3回 日中省エネ・環境総合フォーラム」が開催されました。 (編集部) |
| 【エッセー】 ジャーナリストの問わず語り(第20回) |
日ごろ地球環境問題について取材しているジャーナリストの皆さんに、地球温暖化対策をテーマにしたエッセーを執筆いただくコーナーです。記者の目から見た、現在の温暖化対策の諸動向に対するホンネの意見です。 今回は、化学工業日報・編集局長の田中四郎氏にお願いしました。日ごろから化学業界全体を俯瞰的に注視しているお立場からご執筆いただくという主旨の、年末特別企画です。 |
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「化学技術の革新を求める低炭素社会」 化学工業日報・編集局長 田中四郎 |
石油をはじめとした資源価格は今年半ばまで歴史的な急騰を続けたが、金融危機が表面化したことで急落に転じた。これを、世界的な経済減速(による需要減少)が後押ししている。‘資源バブル’を背景にした大規模な投資計画も修正を迫られそうだ。 今回の金融危機は、バブル経済の負のダイナミズムと相関しあうことになるだろう。こうしたなかでかってなく重要性が高まっているのが、資源価格の乱高下に対する国家的な戦略策定とともに低炭素・資源循環型社会への取り組みだ。両者は、相互に関連し合う。 日本の産業界は、世界トップクラスのエネルギー効率を誇る。二度にわたる石油危機が、省資源・エネルギーによるコスト効率の改善を強く促したためだが、今回の‘石油危機’は脱石油・ガス、省エネへの対応の戦略性をさらに際立たせていると言っていい。化学技術・プロセスの開発は、その中核的なテーマである。素材から最終製品までの広範なサプライチェインを持つ化学産業は、他の産業や業務・家庭分野などでの省エネ・低炭素化に貢献しているケースが多い。化学技術の粋ともいえる太陽光発電、炭素繊維系複合材料を多用する航空機など枚挙にいとまが無い。 一方、CO2をはじめとしたGHG(温室効果ガス)を直接、化学製品の製造に取り込もうとする意欲的な技術開発も進み始めた。三井化学はCO2を原料としたメタノール合成の実証パイロット設備を建設する計画をスタートさせたほか、三菱化学はコークス炉の副生ガスとCO2でベンゼンを製造するプロジェクトに着手した。東京大学や帝人などの産学複合体は、CO2から脂肪族ポリカーボネート樹脂を誘導する開発計画に取り組んでいる。これらは、かって国家プロジェクトとして推進されたC1化学の発展系ともいえる。 近く発足する米国のオバマ政権は、温暖化対策に強い意欲を示している。グローバルな温暖化対策の必要性は論をまたないが、足元での省資源・エネルギーへの取り組みで化学技術が果たす役割が一段と注目されることになりそうだ。
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