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2013年 日化協会長 年頭所感

2013年年頭所感

会長

一般社団法人 日本化学工業協会

会   長   高 橋 恭 平

平成25年(2013年)の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。

昨年5月末に私が日化協会長に就任した際、化学産業の課題の「いの一番」に、化学産業にとって保安・安全の確保は最重要課題である旨を申し上げました。しかし、誠に遺憾ながら、化学プラントでは事故・災害が継続して発生しております。

事故でお亡くなりになられた皆様に哀悼の意を表するとともに、負傷された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

また、私は会長就任時に化学産業が目指すべき目標として「化学産業の市民権の確立」とも申し上げました。言うまでもなく、化学産業にとって事故や労働災害を起こさないこと、すなわち「保安・安全の確保」は最大の使命であり、「市民権確立」の大前提であります。この使命が果たせなければ化学産業への信頼は失われ、個々の企業だけではなく化学産業全体が存在意義を問われる事態となりかねません。化学産業に従事する皆様には、今一度心を新たに「保安・安全への取組み」を強化していくことを強く要請いたします。

 

さて、冒頭より厳しいお話をしましたので、明るい話題を2つお話しします。

昨年、京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞されました。心からお祝いを申し上げます。山中教授のご専攻は化学(ケミカル)ではありませんが、iPS細胞の開発から6年という短期間で受賞されたことは、日本の科学(サイエンス)のレベルの高さを改めて証明するとともに、iPS細胞の再生医療への応用に対する世界的な高い期待感の現れでもあると思います。

現在、日化協の取組みである新LRIでは、iPS細胞に先行する万能細胞のES細胞を用いた化学物質の安全性評価の研究支援を行っております。iPS細胞は、皮膚細胞などから作ることが可能であり、再生医療分野のみならず、化学物質の安全性評価への活用といった化学産業を推進する技術としても有望で、今後の展開に大いに期待しております。

次の明るい話題ですが、日化協のc-LCAの取組みに対し、昨年12月にLCA日本フォーラムより「経済産業省産業技術環境局長賞(最優秀賞に該当)」を受賞しました。c-LCAは、化学製品を活用した最終製品と比較(従来)製品のそれぞれを、製品の全ライフサイクルで排出されるCO2排出量を比較し、化学製品や技術が果たすCO2排出量削減貢献量を論理的で実証的に示す解析方法で、化学製品が地球温暖化防止にいかに貢献しているかを示しています。

c-LCAの実例紹介冊子の発行や、CO2排出量削減貢献量算定のルールを明確化し、併せて実践上の留意点をまとめた冊子を発行するなどの活動が認められ、今回の受賞となりました。今後は、日本のみならず世界規模で、c-LCAの考え方を他の産業へ広めていきたいと考えております。

 

昨年後半より、欧州経済の停滞や中国向け輸出の減少などによる外需の影響、エコカー補助金の終了などによる個人消費の落ち込みにより、化学業界も厳しい状況の中で年を越しましたが、新しい年の幕開けですので、よりポジティブに考えていきたいと思います。

アメリカ、中国、日本、そして韓国と相次いで新政権が新たな政策を打ち出す本年は、期待感を込めて昨年よりは改善の方向に向かうと考えております。特に中国では、昨年の前半に積み上がった在庫水準は9月以降減少に転じ、輸出も秋口から回復の兆しを示しています。これに加えて、中国の新政権によるインフラ投資、個人消費刺激策、輸出奨励などの効果的な施策を期待しています。

 

日本でも政権交代が行われ、安倍首相は年末に発足した内閣に「危機突破内閣」と名付け、日本再生に向けた多くの課題の中でも「日本経済を発展させる」ことを前面に押し出されています。大型補正予算が実現し、金融緩和が進めば日本経済の下支えとなり、企業業績の改善にも結び付くことを期待しています。また、日銀は物価目標の導入や10兆円規模の追加金融緩和など、デフレ対策を行うことを早期に決定しました。政府と日銀には早期に、目に見える形で有言実行を望みたいと考えます。

 

化学産業の立場として2つのことを要望したいと思います。

まずは、エネルギー問題です。昨年9月に取りまとめられた「革新的エネルギー・環境戦略は様々な矛盾が内在しています。これを根本的に見直し、「S+3E (安全性確保:Safety+エネルギーの安定供給:energy security、経済性:economic efficiency、環境適合性:environment)」を重視した、現実的なエネルギー政策を再構築することを強く要請します。

次に、国際競争力の面から6重苦を解決していただくことは当然として、同時に、日本の経済成長を確保するためには、外部の目、すなわち諸外国から見て、日本が魅力的なパートナーあるいは投資先となることが必要です。そのためには、日本自らが、受け身ではなく積極的に国を開くとの観点から、TPPなどの経済連携をぜひ進めてほしいと思います。

 

この様な厳しい環境下とはいえ、化学産業は高機能な新素材や新プロセスをユーザー業界に提供していくマザー・インダストリーとして、また、世界の持続的発展を支えるソリューション・プロバイダーとして貢献していかねばなりません。言い換えれば、日本の経済成長を支えることは、まさに化学産業の役割です。

この1年が、化学業界にとって新たな転換の時期となることを祈念し、年頭所感といたします。

キーワード: 
高橋 会長 挨拶 年頭 所感