(101) 化学物質庁の管理役員会は、予算を作成し、施行を審査し、内規を策定し、財務規則を適用し、事務局長を任命するのに必要な権力を持つべきである。
(102) リスク評価専門委員会や社会経済分析専門委員会を通して、化学物質庁は、所管内で科学的見解を出すことにおいて、欧州委員会に付属した科学専門委員会の役割を引き受けるべきである。
(103) 化学物質庁は、加盟国専門委員会を通して、調和のとれた取組みを必要とする特定の問題について、加盟国当局間の合意を目指すべきである。
(104) リスク評価専門委員会と社会経済分析専門委員会の科学的見解が、欧州共同体内で利用可能で、適切な可能な限り幅広い科学的技術的専門知識に基づくようにするため、化学物質庁と加盟国内で担当している権限のある当局との間の緊密な協力を確実にする必要がある。同じ目的で、その専門委員会は、他の特定の専門家に頼ることができるようにすべきである。
(105) 化学物質の安全な使用を確保するために増大した自然人又は法人の責任を考慮して、施行を強化する必要がある。このため、化学物質庁は、化学物質規制の施行に関係する情報の交換や活動の調整を行うための加盟国のためのフォーラムを用意すべきである。この点で、現在非公式な加盟国間協力は、より公的な枠組みとしたほうが有益だろう。
(106) 化学物質庁が行う決定により影響を受ける自然人又は法人のために、庁内に上訴の手続きを保証する裁定委員会を設立すべきである。
(107) 化学物質庁は、部分的には自然人又は法人が支払う手数料により、また部分的には欧州共同体の一般予算により、財政的に管理されるべきである。欧州共同体の一般予算に請求できる補助金に関する限り、欧州共同体の予算手続きを適用すべきである。さらに、欧州共同体の一般予算に適用される財務規則に係る理事会規則(EC、Euratom) No 1605/2002 の第185条に言及された機関に対する枠組み財務規則についての2002 年12 月23 日付の欧州委員会規則(EC、Euratom) No 2343/2002
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の第91 条に従って、会計検査院が会計監査を行うべきである。
(108) 欧州委員会及び化学物質庁が適切と考える場合には、第三国の代表者が、化学物質庁の作業に参加することができるべきである。
(109) 国際的な規則との調和に関心を持つ組織との協力を通して、化学物質庁は、そのような調和のとれた活動において欧州共同体及び加盟国の役割に貢献すべきである。幅広い国際的コンセンサスを促進するため、化学物質庁は、化学物質の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)のような化学物質規制における既存の、また設定中である国際的基準を考慮に入れるべきである。
(110) 化学物質庁は、自然人又は法人がデータ共有規定の下で、その義務を果たすために必要な基盤を整備すべきである。
(111) 化学物質庁の使命と、人及び動物用の医薬品の認可及び監視のための欧州共同体手続きを定め、欧州医薬品庁(EMEA)を設立する2004 年3 月31 日付け欧州議会及び理事会規則(EC)No 726/2004
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によって設立された欧州医薬品庁の使命、食品法規の一般原則と要件を定め、欧州食品安全機関(EFSA)を設立し、食品安全に係る手続きを定める2002 年1 月28 日付け欧州議会及び理事会規則(EC) No 178/2002
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によって設立された欧州食品安全機関の使命、及び2003 年7 月22 日付け理事会決定
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によって設立された作業中の安全、衛生及び健康保護に係る諮問委員会の使命のそれぞれとの間の混乱を回避する事が重要である。その結果、EFSA 又は作業中の安全、衛生及び健康保護に係る諮問委員会との協力が必要な場合には、化学物質庁は、手続きの規則を確立すべきである。もしそうでなければ、本規則は、欧州共同体法規により、EMEA、EFSA、作業中の安全・衛生及び健康保護に係る諮問委員会に与えられた権限を侵害すべきでない。及び2003 年7 月22 日付け理事会決定15によって設立された作業中の安全、衛生及び健康保護に係る諮問委員会の使命のそれぞれとの間の混乱を回避する事が重要である。その結果、EFSA 又は作業中の安全、衛生及び健康保護に係る諮問委員会との協力が必要な場合には、化学物質庁は、手続きの規則を確立すべきである。もしそうでなければ、本規則は、欧州共同体法規により、EMEA、EFSA、作業中の安全・衛生及び健康保護に係る諮問委員会に与えられた権限を侵害すべきでない。
(112) 人の健康及び環境に対し高レベルの保護を保証しながら、同時に物質そのもの又は調剤に含まれる物質に対する域内市場の機能を達成するため、分類と表示のインベントリーに係る規則を確立すべきである。
(113) 登録の対象か又は指令67/548/EEC の第1 条に適用され上市されるかのいずれかの物質についてはどのようなものでも、分類と表示がこのインベントリーに含まれるよう、化学物質庁に届出がなされるべきである。
(114) 一般公衆及び特にある種の物質と接触する者に対する調和のとれた保護、そして分類及び表示に関係する他の欧州共同体の法規の適切な機能を確実にするため、インベントリーには、指令67/548/EEC 及び指令1999/45/EC に従って可能であれば同一物質の製造者及び輸入者により合意された分類や、またある物質の分類及び表示を調和するための欧州共同体レベルでなされた決定に従った分類が記録されるべきである。このことは、指令67/548/EEC の附属書I に記載された特定の物質又は物質群の分類及び表示を含む、指令67/548/EEC に基づく実施に関係して蓄積された作業や経験に十分に注意すべきである。
(115) 資源は、最も高い懸念のある物質に焦点を当てるべきである。従って、区分1、区分2 又は区分3 の発がん性、変異原性又は毒性として、呼吸器感作物質として、又は個別の判断で他の影響について分類の基準を満たすならば、その物質を指令67/548/EEC の附属書I に加えるべきである。権限のある当局が、化学物質庁に提案を提出できるための規定を作成するべきである。化学物質庁は、この提案に関する見解を与えるべきであり、また利害関係者もコメントする機会が与えられるべきである。欧州委員会は、その後に決定を下すべきである。
(116) 本規則の施行に関する加盟国及び化学物質庁による定期的な報告は、本規則の履行及びこの分野の傾向を把握するのに不可欠な手段であろう。この報告の所見からの結論は、本規則を見直し、必要ならば、改正案を作成する上で有用で実用的なツールであろう。
(117) EU 市民が化学物質の用途を知り得た上で決定をすることができるよう、EU 市民がばく露されるかもしれない化学物質についての情報のアクセスが確保されるべきである。これを達成する透明性のある方法は、有害な特性の簡単な紹介、認可された用途やリスク管理措置を含む表示要件や関連する欧州共同体法規を包含する化学物質庁のデータベースに保管された基礎データへの自由で簡単なアクセス権を市民に与えることである。化学物質庁及び加盟国は、環境情報への公衆のアクセスに係る2003 年1 月28 日付け欧州議会・理事会指令2003/4/EC
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、欧州議会、理事会及び欧州委員会の文書への公衆のアクセスに係る2001 年5月30 日付け欧州議会及び理事会規則(EC) No 1049/2001
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及び欧州共同体が当事者である、情報ヘのアクセスと決定における公衆の参加と環境問題における司法へのアクセスに係るUNECE 協定に従って、情報ヘのアクセスを認めるべきである。
(118) 本規則での情報の開示は、規則(EC) No 1049/2001 の特定の要件に従う。本規則は、上訴権を含む手続き上の保証と同様に、情報の流出に対し拘束力のある期限を設定する。管理役員会は、化学物質庁に対するこれらの要件の適用に対する実際的な取り極めを採択すべきである。
(119) 加盟国の権限のある当局は、欧州共同体法規の施行への参加は別として、加盟国内の利害関係者と緊密であることから、物質のリスクや自然人又は法人の化学物質法規の下での義務についての情報の交換における役割を果たすべきである。同時に、地球規模の伝達プロセスの整合性や効率を確実にするために、化学物質庁、欧州委員会及び加盟国の権限のある当局との間の緊密な協力が必要である。
(120) 本規則によって確立されたシステムを効果的に運用するため、施行に関する加盟国、化学物質庁及び欧州委員会の間の良好な協力、調整及び情報交換があるべきである。
(121) 加盟国は、本規則の遵守を確実にするため、効果的な監視や管理対策を導入すべきである。必要な査察を計画し、実行し、その結果を報告すべきである。
(122) 加盟国による施行活動のレベルにおける透明性、公平性及び整合性を確実にするため、不遵守が人の健康及び環境に被害を及ぼすことがあることから、加盟国は、不遵守に対する効果的で、バランスのとれた抑止力のある罰則との観点から、罰則のための適切な枠組みを設定する必要がある。
(123) 欧州委員会に与えられた執行権の行使のための手続きを規定する1999 年6 月28 日付け理事会決定1999/468/EC
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に従って、本規則の施行に必要な対策及びそれに対する改正は採択されるべきである。
(124) 特に欧州委員会に対し、ある場合において附属書を改正したり、試験法の規則を設定したり、遵守チェックのために選ばれる一式文書のパーセンテージを変更したり、その際の選択の基準を修正したり、技術的に試験ができない場合の十分な正当性は何かを定義する基準を設定するための権力を与えるべきである。これらの措置は、一般的な適用範囲内のものであり、本規則の非本質的事項の改正又は新たな非本質的事項の追加により本規則の付録を補完するよう設計されているので、指令1999/468/EC の第5a 条に規定される精査による法的手続きに従って、これらの措置を採択すべきである。
(125) 本規則の策定の完全な適用への移行中に、特に化学物質庁の立ち上がり期間において、効果的で時宜を得た方法で化学物質が規制されることが不可欠である。それゆえ、化学物質庁の管理役員会が事務局長自身を任命するまで、欧州委員会は契約の締結や暫定事務局長の任命を含めて、化学物質庁の設立に向けて必要な支援を行う規定を策定すべきである。
(126) 立ち上がり時期に、規則(EEC) No 793/93 及び指令76/769/EEC に基づく作業を十分に活用するため、かつそれらの作業が無駄になることを避けるため、本規則が定めた完全な制限の手順に従うことなく、本作業に基づく制限を開始する権限を欧州委員会に与えるべきである。本規則が発効すれば直ぐに、リスク軽減措置を支援するために、これらすべての事項を利用すべきである。
(127) 新システムへの移行を円滑にするため、本規則の規定が時期をずらした方法で発効するのが適当である。さらに、本規定の段階的な発効は、関連するあらゆる関係者、当局、自然人又は法人及び利害関係者が、ふさわしい時に新しい義務への準備に資源を集中できるようにすべきである。
(128) 本規則は、指令76/769/EEC、委員会指令91/155/EEC
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、委員会指令93/67/EEC
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、委員会指令93/105/EC
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、委員会指令2000/21/EC
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、規則(EEC) No 793/93 及び委員会規則(EC)No 1488/94
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を置き換える。それゆえ、これらの指令及び規則は廃止されるべきである。
(129) 整合性のため、本規則が適用する事項に既に対処している指令1999/45/EC は改正されるべきである。
(130) 本規則の目的、即ち、物質についての規則を定め、欧州化学物質庁を設立することは、加盟国によっては十分達成することができず、それゆえ欧州共同体レベルでよりよく達成することができることから、欧州共同体は条約第5 条に定められた権限委譲の原則に従って、対策を講じることができる。本条に規定されたようにつりあいの原則に従って、本規則はこれらの目的を達成するために必要であることを逸脱しない。
(131) 本規則は、特に欧州連合の基本的憲章
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で認められている基本的権利や原則を遵守する。特に、本規則は、同憲章の第37 条によって保証される環境保護及び持続可能な開発の原則の完全な遵守を確保することを求める。