REACH CSA ツール

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REACH CSA ツール

更新日 2011-10-19 | 作成日 2011-10-04

REACH CSA/CSRツール CHESAR

2011-10-04 公開
2011-10-19 一部修正

この文書では欧州化学品庁(ECHA)がリリースしているREACHのための化学品安全性評価とその報告書の作成のためのITツールであるCHESARについての簡単なご紹介をしています。

背景

REACHはあらゆる分野で、化学品の安全な製造・使用取扱を担保し、かつ、経済と労働の多くの部分をカバーしている欧州化学業界の持続的発展を企図して、化学物質の製造・輸入者及び川下利用者に多大な安全上の義務を課しています。

その義務の中には、欧州市場に化学製品を上市する者が果さなければならない義務、

  • 化学品安全性報告書(CSR)の当局への提出の義務があり、また、
  • 安全データシート(SDS)をサプライチェーン上で自分の化学製品の受領者への配付の義務

があります。

安全データシート(SDS)と曝露シナリオ

化学品の使用取扱いに伴う安全は、実際にそれをご利用いただく方の使用取扱い方法(use)にもよりますから、REACHは化学品を製造・輸入・上市する者に、商流の川下の利用者に安全データシート(SDS)の配付を求めていて、その書類には、その利用者に係わる使用取扱について、どのような使用取扱をし、対策をとれば、その化学製品にかかわる安全を確保できるかを記載することを求めています。 一定の条件のもとでは、さらに詳細な安全な使用取扱方法と安全対策を、曝露シナリオ(ES)として作成しSDSに添付して、配付・伝達することを求めています。

化学品安全性報告書(CSR)

一方、その川下の利用者の安全な使用取扱条件と方策を記載したSDSや曝露シナリオの内容を、書類提出者自身の安全な(製造)使用取扱と方策を示した曝露シナリオとともに、当局に提出する書類である化学品安全性報告書(CSR)の中で科学的に証拠立てて記載することも求めています。

ITツールリソースの必要性 -- 無償ツール CHESAR

これらの目的は理解できますが、どうやって全体の整合性を取って行くのかが問題ですし、これらの書類の作成は産業界にとって多大な負担となるおそれがあり、どうやってその負担を軽減してREACHの目的の一つである化学産業界の持続的な発展を計るかということも問題となります。

そこで、欧州はITに多大な人的・経済的リソースを割き、CSRの作成とSDSへの添付曝露シナリオの作成のためのITツールを多数、当局(または業界関連団体)が開発し、無償で提供しています。 当局が提供しているツールの一つがIUCLIDのプラグインであるCHESAR(CHEmical Safety Assessment and Reporting)ツールです。

このツールは欧州域外の者でも無償で下記よりダウンロードして利用できます:

Chesar ダウンロードサイト

CHESARの位置づけと機能概要

CHESAR位置づけ
図 1 CHESARの機能概要と外部ツールの関係
出典:Andreas Ahrens et al, ECHA (2009)“Chemical Safety Assessment and Reporting Tool", ECHA’s Second Stakeholders Day
実態に即して一部改変。出典では内部に労働者以外に消費者用の計算モジュールも含まれている図になっているが、現在リリースされているCHESAR 1.2ではこの消費者用計算モデルは含まれていない(計画では入っているので次版で実装される可能性もある)
[図はクリックすると拡大表示します]

CHESARは、IUCLIDに入力された物理化学的性質や危険有害性情報(分類/基準値)、あるいは特定された使用取扱用途(identified use)等を取り込み、内部でその使用取扱用途で、人や環境がその物質に曝露する量を推算することが場合により可能です。 必要に応じてCHEAR外部の曝露量推算ツールからの推定曝露量、あるいは、曝露量の実測値を取り込むことも可能です。さらに、各使用取扱用途(use)に対して(推定)曝露量とIUCLIDより取り込んだ危険有害性の基準値(DNEL, PNECなど)との比較によりリスクが制御(control)されているかどうかを判定(リスク判定 risk chracterisation)することができます。

曝露量の推算は、ECETOC TRAに実装されていた労働者曝露量、ERC/EUSESの環境曝露量についての計算アルゴリズムが実装されており、ECETOC TRA(Excel版)上で労働者曝露量や環境曝露量推算を使わなくてもCHESAR上で実施できます。また、使用取扱用途(use)情報を物質のライフサイクルに沿って木構造(tree structure)で記述する機能を持っています。



Chesar内部
図 2 CHESAR内部のモジュールの関係と機能
[図はクリックすると拡大表示します]


最終的にはREACHが求める二つの書類、化学品安全性報告書(CSR)と安全性データシート(SDS)に記載・添付するための曝露シナリオをCHESARから自動生成することが可能です。