一般社団法人日本化学工業協会
会長 橋本 修
現在、化学産業のみならず、日本経済を取り巻く環境は、地政学・エネルギー・経済の各方面で極めて厳しい局面にあります。このような不確実性の高い環境下、化学産業は社会に不可欠な製品を安定的に供給するエッセンシャル産業として、新技術を取り込みながら、さまざまな課題に的確に対応していくことがこれまで以上に求められております。
日化協と致しましては、このような状況を踏まえ、次の三つの取り組みを重点的に推進してまいります。
(1)GX推進による日本の化学産業の基盤強化
日化協は、2025年9月に公表した「カーボンニュートラル、循環型社会の実現に向けた日本の化学産業のスタンス」において、化学産業を社会全体の変革と基盤を支える「ソリューションプロバイダー」と位置づけ、カーボンニュートラルと循環型社会の実現を持続的な成長と国際競争力強化のための「戦略的機会」と捉えております。
このスタンスに基づき、2026年4月に本格導入された政府によるGXの市場創造に向けた「温室効果ガス排出量取引制度(GX-ETS)」について、化学業界における円滑な導入・運用を支援してまいります。
さらに、リサイクル品の社会認知を向上させ、化学品の循環利用に関して日本国内での社会実装を早期に実現することを目的とした「化学品のリサイクル率確認登録制度」は、トライアル運用を開始しました。さらなる制度の認知向上を図ってまいります。
(2)国際社会とのコミュニケーション強化
近年は、地政学的な要因等を背景としたサプライチェーンの分断が顕著になっております。国際的なコミュニケーションの強化を通じて相互理解を一層深め、分断を連携へと転換し、国際社会が一体となって課題に取り組むことの重要性が益々高まっています。
日化協では、こうした流れを踏まえ、国際化学工業協会協議会(ICCA)での活動を中心に諸外国の業界団体との連携を強化して、日本の化学産業のプレゼンスを高めることを支援してまいります。
具体的には、プラスチック汚染に関する国際条約の策定に向けた政府間交渉委員会(INC)が継続される中、ICCAの取り組みへの積極的な参加、化学物質管理におけるグローバル枠組みであるGFC(Global Framework on Chemicals)の達成に向けた積極的な取り組みを継続してまいります。
(3)エッセンシャル産業としての安全・安定操業・化学品管理の着実な実施
安全・安定操業と化学品管理は、「エッセンシャル産業」である化学産業にとって最優先課題であり、安全な製品を安定的に供給する責任を担っています。
日化協では、企業の安全・安定操業のために、デジタル技術活用によるスマート保安の導入を支援し、労働災害撲滅に向けても「安全表彰」をはじめ、会員会社のグッドプラクティスを共有してまいります。また、レスポンシブル・ケアの理念のもと化学品のライフサイクルを通じて、サプライチェーン全体での連携を図ります。日化協が長年にわたって培ってきたリスクベースの考え方などの知見を活かし、化学品管理の強化を支援してまいります。
これらの三つの取り組みを進めることにより、持続可能な社会の実現に貢献できるものと考えております。
化学産業はこれまでも、社会のあらゆるところで生活の快適さや利便性を支えるエッセンシャル産業として、社会課題の解決に主要な役割と責任を担ってまいりました。このことを踏まえ、不確実性が高まる時代においても、化学産業は試行錯誤を重ねながら新たな技術を創出し、価値を提供していくものと確信しております。
化学産業の更なる発展のため尽力してまいる所存ですので、何卒宜しくお願い申し上げます。
