一般社団法人日本化学工業協会 会長 岩田 圭一
化学産業は、社会に必要な製品を安定的に供給するというエッセンシャル産業として、社会・経済の諸問題に対応していくことはもとより、カーボンニュートラルの実現を含むGX(グリーン・トランスフォーメーション)に貢献するソリューションプロバイダーとして、また、新たな環境価値創出の牽引役として、社会からの期待に応えていくことが求められています。
日化協では、こうした点を踏まえ、次の三つの取り組みを重点的に推進してまいります。
(1)「GXの取り組み推進」
日本の化学企業各社において、既に様々なGXの取り組みが進んでいるなか、日化協では、関連分野に関する政府の動向や世界の動きを注視していくとともに、カーボンニュートラルを見据えた技術動向、資源循環経済の推進といった観点に基づき、行政とも連携しつつ、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップを深掘りしてまいります。
また、カーボンニュートラル、循環型社会の実現にあたっては、巨額の設備投資や原燃料の転換など、相応のコストが伴うものであり、サプライチェーン全体での協業およびそれらを支える制度設計が求められます。とりわけ「環境価値」、すなわち製品の環境面での付加価値を、最終製品使用者である一般消費者をも含めて、広く受容する社会を醸成していくことが必要不可欠です。 そうした「環境価値」に対する理解を得ていくための一助として、いわゆる「見える化」、即ちGHG排出量や環境負荷への貢献を定量的に評価できるカーボンフットプリント(CFP)について、化学産業として取りまとめた算定ガイドラインを活用した普及活動を行ってまいります。また、リサイクル品への社会認知を向上させ、化学品の循環利⽤を早期に実現することを⽬的に、リサイクル率確認登録制度の試験運用に取組んでまいります。あわせて、こうした取り組みを通じて、化学産業の重要性や有益性を社会に発信していきたいと思います。
(2)「国際協調の推進」
サステナブル社会実現に向けて、我が国のみならず、世界の化学産業共通の課題が顕在化するなかで、その解決にあたっては、国際協調をより推進していく必要があります。 化学品管理に係る国際的枠組み作りに向けては、国際化学工業協会協議会(ICCA)における活動を中心に、国際連携を図ってまいります。 また、プラスチック汚染終結に向けた政府間交渉委員会(INC)への対応や、GFC(Global Framework on Chemicals)に基づいた化学品管理の体制構築に向けた、化学業界による具体的な行動計画作成の対応などにあたっては、引き続き、会員企業・団体の声を集約し、日本の化学産業の意見を積極的に発信してまいりたいと考えております。
(3)「安全、化学品管理の取り組みの着実な実施」
安全、化学品管理の取り組みは、申し上げるまでもなく、化学産業が存続するための基盤、大前提です。化学産業は、社会生活にとって不可欠な化学製品を、安定的に社会へ供給していく大きな責任を担っています。 保安防災については、特に、化学産業は、設備の高経年化や少子高齢化に伴う人手不足などの課題に直面していることを踏まえ、デジタル技術を駆使する体制の整備と、それを支える人材育成を支援することで、スマート保安導入の支援を行ってまいります。 物流安全については、危険物輸送に関する国際規制動向の把握など、これまでの取り組みを継続してまいりますが、あわせて物流適正化についても、2023 年度末に策定した、『化学品に関する物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画』の周知徹底・浸透を図ってまいります。 化学品管理の面では、引続き、サプライチェーンと一体となった、リスクベースの化学品管理の普及に努め、安全・安心な化学製品を提供してまいります。
以上の三つの取り組みを中心に、誠心誠意努力してまいりたいと存じますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
以上