一般社団法人日本化学工業協会(住所:東京都中央区、会長:岩田圭一(住友化学㈱代表取締役会長)、以下「日化協」)は、研究者奨励および育成の一環として、“化学物質が人の健康や環境に与える影響”に関する優れた業績をあげた研究者を表彰するため、日本動物実験代替法学会(理事長:板垣 宏、以下「JSAAE」)内に設立した日化協LRI賞※の第10回目の受賞者を決定いたしました。
※Long-range Research Initiative = 長期自主研究活動

[受賞者] 福田 淳二(ふくだ じゅんじ)
横浜国立大学大学院工学研究院・教授
[テーマ] Establishment of a developmental toxicity assay based on human
iPSC reporter to detect fibroblast growth factor signal disruption
[邦 題] ヒトiPSレポーター細胞を用いたFGFシグナルかく乱を指標とする発生毒性試験法の確立
[受賞理由]
受賞者は、化学物質の発生毒性を評価できる動物実験代替法の開発に取り組んでおり、シグナル攪乱の動的な変動を指標とするという独創的なアプローチを提案しています。具体的には、四肢の形態形成に不可欠な線維芽細胞成長因子(FGF)シグナル伝達経路の変化を検出することを目的とした、ヒト誘導性多能性幹細胞(iPSC)を活用したレポーターアッセイを提案しています。本法により、四肢奇形を引き起こすことが確認されている化学物質について、良好に発生毒性の判定ができています。
このように、受賞者は、化学物質の毒性試験における動物実験代替法の開発を精力的に進めており、今後も、実験動物の削減や化学物質のヒト健康影響評価の高精度化などにおいて、ますますの活躍が期待できる研究者です。
なお、授賞式は、11月1日(土)~3日(月)にパシフィコ横浜で開催される日本動物実験代替法学会 第38回大会にて執り行われます。
LRIは、国際化学工業協会協議会(ICCA)に加盟している欧州化学工業連盟、米国化学工業協会および日化協の3つの団体によって1999年から運営されているグローバルプログラムで、化学物質の安全性の向上と不確実性の低減を目的として、“化学物質が人の健康や環境に与える影響”に関する研究を長期的に支援する自主活動です。日化協は、2000年からLRIを通じた研究支援を行っています。「日化協 LRI賞」は、LRIの認知拡大および理解促進を図るとともに、同分野の優れた若手の研究者および世界をリードするような新しい研究分野を発掘することを目指して2015年に設立されました。JSAAEウェブサイトで公募を行い、JSAAE内学術委員会の厳正なる審査を経て、日化協LRI賞へ推薦された候補者を日化協が承認し、受賞者が決定されます。